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泉美木蘭
2016.3.4 19:46

待機児童問題は「町づくり」の欠陥でもあるのでは?

「女性の活躍」という言葉に惑わされてしまうが、待機児童問題は、
単なる「働く母親の闘い」という捉えかたでは解決しないと思う。
私はいま子供と一緒にいないので、子育て問題を語るのはとても
憚られる気持ちがあるのだけれど、思うところあるので何回かに
わけて書いてみたい。

2014年、東京都目黒区で開園予定だった60名規模の保育園が、

自治体を通じて園児を募集していたにも関わらず、
周辺住民からの
反対運動を受けて、開園延期に追い込まれるという
出来事があった。
もともと高齢者の多い居住区で、老人の憩いの場でもあった緑豊かな
公園を潰しての開園計画であったことから反発が強かったようだ。

「子供の声に対する対策はあるのか」
「子供の送迎時に、自転車を道路に止めて道を塞ぐのではないか」
「子供を預ける親が、園の前でおしゃべりしたりしないのか」

騒音問題のほか、若い親のマナーに対する強い拒絶感もあったという。
住民との話し合いを行った園の担当者によると、保育園の設立に対して、
『基地のようなトンデモナイものがやってくる』
というイメージで受け取られている感じもあったという。

こうなったら話し合いをくりかえして、町ぐるみの合意形成を目指すしか
ないと思うが、『基地のようなトンデモナイもの』とまで思われていると、
相当な時間がかかってしまう。
この保育園のその後を調べてみると、どうやら、ようやく今年の6月に
「開園予定」となり、
保育士の募集を行っていた。
2年半かかって、開園できるなら良かったが、当時入園予定だった子は、
もう卒園の年齢になっている。
2014年の目黒区の待機児童は132名だった。
2015年は247名、そして今年は294名と増加中だ。

このように反発を受けながら開園した保育園のなかには、
開園後も苦情が殺到
して、子供を自由に遊ばせられないところもあるという。
以前、NHKの特集で見たのだが、「子供の姿を見たくない」という苦情まであり、
保育園をにらみつけるような住民もいるようだ。
取材を受けていた保育園では、天気のよい昼間でもカーテンを閉めきり、
楽器は禁止、園庭で遊ばせる時間も制限して、苦情次第では室内から
出さない日もあると言っていた。
ようやくできたものの、周辺住民に気兼ねして、ビクビクと子供を保育しなければ
ならない保育園・・・。


こういった話を知ったときは、なんて冷たい住民たちなんだと腹が立ったが、
そもそも、現代の日本の町そのものが、子供たちの居場所をある意味
「隔離」した状態にあることにも問題があるのでは
ないかと思った。

(つづく)
泉美木蘭

昭和52年、三重県生まれ。近畿大学文芸学部卒業後、起業するもたちまち人生袋小路。紆余曲折あって物書きに。小説『会社ごっこ』(太田出版)『オンナ部』(バジリコ)『エム女の手帖』(幻冬舎)『AiLARA「ナジャ」と「アイララ」の半世紀』(Echell-1)等。創作朗読「もくれん座」主宰『ヤマトタケル物語』『あわてんぼ!』『瓶の中の男』等。『小林よしのりライジング』にて社会時評『泉美木蘭のトンデモ見聞録』、幻冬舎Plusにて『オオカミ少女に気をつけろ!~欲望と世論とフェイクニュース』を連載中。東洋経済オンラインでも定期的に記事を執筆している。
TOKYO MX『モーニングCROSS』コメンテーター。
趣味は合気道とサルサ、ラテンDJ。

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